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記事: 室町時代の「水酛」製法が現代に復活!独特な味わいが楽しめる「新しい」日本酒

室町時代の「水酛」製法が現代に復活!独特な味わいが楽しめる「新しい」日本酒

室町時代の「水酛」製法が現代に復活!独特な味わいが楽しめる「新しい」日本酒

「水酛」という言葉をご存知でしょうか。室町時代に開発された酒母の製法のことで、現代ではほとんど見かけません。しかし、その独特な味わいが好む日本酒ファンも多い隠れた名品。

日本酒の味わいの幅広さを感じることができる面白い日本酒で、日本酒に少し慣れてきた方が新たにチャレンジするにはもってこいのお酒です。

今回は、「水酛」の具体的な製法や味の特徴についてご紹介していきたいと思います。

■日本酒造りに酸は欠かせない

日本酒造りで肝となる工程に「酒母造り」と呼ばれるものがあります。酒母とは、蒸した米と水に麹、酵母、乳酸菌を加えたもので、酵母を培養することによって日本酒の発酵の元になるもの。

酵母は雑菌に弱く、雑菌が侵入してしまうと思ったように酵母が増殖してくれません。一方で、酸に強いという特徴を持つため、乳酸を加えることで酵母以外の雑菌を死滅させることができます。乳酸は日本酒造りに欠かすことのできない存在なんですね。

■水が違うから「水酛」

一般的な日本酒造りで用いられる酒母の製法は「速醸」。工業生産された人工乳酸を加えることが特徴です。人工的に乳酸を生産できるため、品質が安定しやすいというメリットがあります。

「水酛」は速醸が開発されるよりずっと前から存在する製法であるため、もちろん使用する乳酸は天然のもの。このような、天然の乳酸菌を育てた酒母で代表的なものでは「生酛(きもと)」造りがあります。水酛よりは聞きなじみのある言葉でしょうか。

では、「生酛」と「水酛」の違いとは何でしょうか。実は、仕込み水に違いがあるんです。生酛では普通の水を使用するのに対し、水酛では生米と蒸米を数日間浸して乳酸発酵した「そやし水」と呼ばれる酸性水を使用します。このそやし水を使用することが「水酛」の最大の特徴なんですね。

■放っておくだけで美味しくなっていく

一般的に、日本酒は数年置いておくと元の酒質から味わいが変化してしまい、老ね香(ひねか)と呼ばれるオフフレーバーが出てしまうことが多いため、購入したら冷蔵庫で保管をして早めに飲むことが推奨されています。

しかし、水酛造りの日本酒には抜栓後も常温で保存しておくだけでどんどん旨みが増していくお酒が多いという特徴があります。

すぐに変化が訪れるわけではありませんが、長い時間をかけて味の変化を楽しみながら少しずつ飲み進めていくという楽しみ方ができるのも魅力の一つと言えますね。

WAKAZEの『FONIA TERRA』も水酛造りで造られています。アルコール度数は14度で、柚子や檸檬、山椒、生姜といった和の柑橘やハーブを日本酒造りに取り入れた革新的なお酒です。

和の柑橘やハーブをただ混ぜるのではなく、日本酒の ”発酵中に入れる” ことで米由来のお酒の味わいや香りが絶妙に組み合わさった逸品。水酛で仕込んだ力強い味わいと、生姜、山椒を加えて醸し出したスパイス感が特徴です。

かなり風変わりなお酒のため、新しい味に出会ってみたい!という時におすすめです。

■ヨーグルトのような香りと濃厚な味わい

生酛造りの日本酒は、深みのある味わいとコクが魅力です。水酛造りはそれに加えて、ヨーグルトのような酸味のある香りが特徴。酸味と旨味が凝縮され、後味までしっかり楽しめるお酒が多いです

辛口の日本酒しか飲んだことのない人は少し驚いてしまうかもしれませんね。

■美吉野醸造のこだわりと『15世紀の叙情』

そんな水酛造りにこだわって日本酒造りをしている酒蔵の一つに奈良県の美吉野醸造があります。吉野の奥深い山林地帯の中にある酒蔵で、「酸を開放する酒造り」をポリシーに日本酒を製造しています。

もともと吉野は高温多湿ということもあり、発酵に関する文化が古くから根付いている土地。酵母や麹がパワフルに働くため、硬い米も溶かすことができ、日本酒の味わいが複雑になるという特徴があります。水酛造りは、そうした土地の良さを活かした製法とも言えますね。

美吉野醸造が製造している水酛造りに、『15世紀の叙情』があります。

アルコール度数は17度で、ヨーグルトのような酸味のある香りをガツンと感じます。口に含むとほのかな甘みと凝縮された旨みがしっかり感じられ、後味もかなり残る濃厚な味わい。レモンのような酸っぱさではなく、ヨーグルトのような発酵性の酸味が印象的です。

蔵の造り手の方も常温熟成を推奨している商品で、抜栓後も常温で保存することで色味が増し、よりまろやかになり、旨みも増していきます。未来日本酒店では、3年間ほど自社で常温熟成をさせた状態で販売しているため、アルコールの刺激が和らぎ、熟成由来の深い旨みを買ったその日から味わうことが可能です

チーズと合わせるのが王道ですが、濃厚な味わいゆえにスパイシーな料理とも相性は抜群。カレーやタイ料理との組み合わせもおすすめです。ぜひワイングラスで飲んでいただきたい逸品です。

自宅で簡単に楽しめるものだと、「クリームチーズの蜂蜜がけ」がイチオシ!

乳酸は温めることでおいしさへと変化するため、温めて飲むとグッと味わい深くなるはず。色々な飲み方を試しながら、自分なりのベストを探してみるのも良いですね。

「室町時代の人々はこんなお酒を飲んでいたんだな」と想像しながら飲んでみるのも素敵です。

■手作業だからこそ、運命の出会い

生酛造りや水酛造りは手間と時間をかけて造る伝統的な製法。天然由来の乳酸を使用し、手作業で酒母造りを行うため、大量生産が難しく、いつでもどこでも購入できるというわけではありません。

しかし、天然由来の乳酸、手作業で造られた酒母だからこそ楽しめるパワフルな味わいやコクは生酛造りや水酛造りの最大の魅力のひとつ

だからこそ、店頭で出会った時、オンラインスアで見つけた際にはぜひ勇気を出して一度チャレンジしてみて欲しいと思います!

今回ご紹介した『FONIA TERRA』『15世紀の叙情』は未来日本酒店でも取り扱っているので、気になる方はぜひ試してみてください!

(文/はやしみゆ)

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