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記事: 阿部酒造 阿部裕太様part3

阿部酒造 阿部裕太様part3
インタビュー

阿部酒造 阿部裕太様part3

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ピックスでは、お酒のセレクトショップ未来日本酒店で取り扱っているお酒の作り手の方々へのインタビューを通して、お酒の味だけでなくその背後にあるストーリーと想いも皆さまにお届けいたします。
今回も前回に引き続き米どころ新潟の阿部酒造の6代目阿部裕太様にお話しをお伺いします。

酒造りへのこだわり


-お米へのこだわりを教えて頂けますか


お米へのこだわりは必ずしも大きくないです。地元の米・地元の水を用いて酒を醸したい。ただそれだけです。
等級が付いている物とか、酒造りに向いている物とかは兵庫県とかに行けばあるのかもしれないですが、とにかくいいお米を仕入れようというよりも、地元のものにこだわりたいですね。


-お米の品種はなんですか


基本は五百万石ですね。
今目を付けているのはコシヒカリなどの飯米です。コシヒカリは既にしっかりとブランドが出来ていますし、コシヒカリのお酒を造ってみたいです。

補助金の話をするとどうなるかわからないですが、国として酒米作らないでくださいってなる可能性も今後あると思って。例えば、山田錦はとても人気な酒米なので、大きなお蔵が大量に買い取っているので、今価格が高騰していて。ないと思いますが、仮にそういった蔵元が倒産したとき山田錦の価格が暴落しちゃうので、需要と供給合わなくなっちゃう。
これだけパンが入ってきてごはん食べなくなっている中、酒米なんか作っているんじゃなくて飯米つくれとなってもおかしくないのかな、と。酒米だけじゃない可能性を探したいですね。食べるコメで酒を醸す技量を調えておいても悪くないと思いますし、新潟っていう場所柄他県に比べて飯米の知名度もあるので、食用米で作れるなら造りたいです。


-料理との相性について造り手としておすすめのもがあると飲み手としても選択肢広がるかなと思うのですが、あべさんが今持っているラインナップでそれぞれコメントいただけますか?


平仮名の「あべ」はうまくちで濃いので味が濃い料理。細かく言うとクリーム系の料理とか和食の味噌とか、醤油でも九州のちょっと甘口ベースのものとか。魚でも刺身じゃなくて煮つけとか。味がしっかりしている料理に合うように作っています。
でも本当に造りたいのがあって。地元の新潟県って海に面しているので刺身文化なんですよ。なので刺身に合う酒は、地元限定でいずれ造りたいと思います。


-濃口ですが、濃さが前面に出ず寄り添うような酒も出てくる可能性もあるわけですね。


そうですね。どういうお酒を造りたいっていうのは料理に付随していると思っていて。
前職が前職なのでマリアージュは考えたいなって思っています。やっぱり新潟は酒どころとまだ言われている地域なので地元の産品に合うものは造りたいですね。


-今のラインナップって所謂食中酒ですよね。


今はそうですね。最終的にはレストランに行って最初から最後まで完結できる「あべワールド」っていうところに行きつきたいですね。泡ものとかドライなものとかも作る必要あると思っています。貴醸酒とか。


-スパークリングをやる予定はありますか?あるとすれば度数など、スパークリングの展望についてはいかがですか?


スパークリングは間違いなくやりたい。
あべの酒質とは真逆ですが、シャンパンってドライで、新潟の蔵元で多い端麗辛口のお酒は合うんじゃないかと思います。次世代の蔵でそういうのをやりたい。


-満寿泉さんのはどうですか?


僕の個人的なスパークリングのゴールは水芭蕉さんです。辛口で発泡感も強い。おりがないのに発泡しているっていうお酒が出来ているので、それは僕の代で絶対やりたいです。
いわゆる濁りとか瓶内二次とか、途中で止めてアルコール度数低くて発泡するっていうのは簡単にできちゃうんですよ。けど個人的にはドライにしたいですね。


-老ね香って相当にわかりますか?
プロにとっていわゆる老ねって絶対悪になるのでしょうか?
※老ね香(ひねか):時間の経過と伴に発生する特異な香り。日本酒本来の香りではない。


僕は老ねが嗅ぎ分ける能力がそこまで強くないです。鼻って得意分野不得意分野あるって、生ひねは苦手分野なんですよね。この部分は造りとして間違えなく、なくてはいけないと思っていますが。
でも極論は生老ねなんてどうでもいい。飲み手は正直わからないというより、そこまで求めていないのかなと。特に僕の世代に関してですね。造っているからこそ分かります。
それより大事なのはカビ臭。飲み手でもカビは分かるようになってほしい。清酒業界からしたら老ねはマイナスポイントにしかなりませんが、飲み手は分からない。気づかないくらいで単純にアルコールとして楽しんで欲しいです。自分の舌で美味しければ“おいしい”と思い、“まずい”と思えば飲まなければいい。僕が今後の日本酒の飲み手に求めるのはコレです。


-酸もそうですもんね。昔は雑味でしたが今はそうでもなくなりましたね。


それがいい例ですね。
乳臭いお酒って、清酒業界で言ったら柿渋いっぱい入れてるってわかるんです。品評会だとそれだけでやり直しだって言われるくらい大きなバツが付きますが、飲み手からしたらそれで味が悪くなるわけではなくて。それはそれでチーズとかブルーチーズとか絶対合いますし。割り切って出してくる蔵があってもいいのではと思いますね。


-しぶってダメなんですね。


柿渋って液状にしたものがチーズのような強いにおいを発するのですが、ろ過する前にお酒に入れると、濁りの部分とそうじゃない部分が分離するんですね。澱引きという工程です。もちろん、柿渋以外の方法で行う蔵もあります。先人の知恵で柿渋を入れましょうってなるんですが、量を間違えると乳臭さが残っちゃうんですよね。
今は色んな方法があって柿渋使っている蔵って昔ながらの造りをしている所しかないと思いますが、造りとしては今まで一般的だったものです。うちの親父が作ってた23BYとか24 BY飲んでみて欲しいのですが、柿渋パンパンですよ(笑)。
今柿渋臭するお蔵さんってほとんどないんです。スモーキーさとは違うんでしょうね。清酒業界の4VGとは違うんですよね。ワイン酵母使うと出るっていう香りなんですが。それって燻製系の料理と合うはずなんですが、造り手としては出したくない香りです。

未来の挑戦に向けて


-あべさんはこの後どこ向かって行くんですか?
阿部酒造を大きくしていくのか、伝道師的に束ねる人になっていくのか…。キャリアのゴールとして見据えているところはどこなんですか?


いろいろやりたいですが、最終的にはやっぱり酒を造りたいです。
私自身酒が強いというわけではないですが、お酒は大好きです。日本酒を造りたいというよりは酒を造りたい。酒の中でも醸造酒に興味があります。ビール・シードル・ワインなどです。


-理想とする酒だったり石高だったりは具体的にありますか?


今後どうしていたいかってよく聞かれますが、あんまり考えないようにしていて。
強いて言えば量は1000石から1500石にしたい。なぜかというと、たまたま知ってるお蔵が海外にも国内にも流通させられていたのがその量なんです。


-その時は一升瓶と四合瓶って両方造りますか?
飲食店向けには一升瓶、とか。


うーん。量で考えはしましたけど、それ以外の将来設計は正直考えていないです。
周りのスピード感が早すぎるし、周りの環境がものすごい勢いで変わっている。2年後3年後どうなっているか分からないし、新潟に地震が来るかもしれない。で、それを真面目に考えちゃうと何も出来なくなる。どうなっているか分からないくらいスピード感がある中で20年後とか30年後を見据えるのは僕はナンセンスだと思う。時代によって合わせていくっていう臨機応変さが必要ですし、その時々に一生懸命生きていくっていう事が大事だと思いますし、それが一生懸命酒造りをやっていくということになる。

そういうとこでいうとあまり将来って考えてはないですね。前職ですごくこれは学びました。目まぐるしく状況が変わっていったんですよ。4年弱務めていたんですが。新卒にしては本当に有難い位スピード感を感じさせてくれたので為になりましたし、清酒業界でそれは生かせるなと思いました。本当はこうしたいと思ったことが、あったんですが蔵に戻って全部なくなりました。今まで地震が新潟に2回きましたが、あと1回大きなのが来たら、蔵を壊して新設工場造ったほうが安上がりなくらいの状態。いつ壊れるのか心配して酒造らないくらいなら心配しないほうがいいと思うんですよね。
結局環境変わって全部変わることになると思うのであまり考えないようにしていますね。


-ありがとうございました。



日本酒造りに対する情熱・日本酒業界のこれからの展望等、阿部さんには様々なお話を聞かせていただきました。日本酒に限らず様々な分野でご活躍なさることでしょう。
次回以降もお酒の作り手の情熱に迫って行きます。どうぞご期待ください。

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