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記事: 藤井酒造藤井大貴様part1

藤井酒造藤井大貴様part1
インタビュー

藤井酒造藤井大貴様part1

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トピックスでは、お酒のセレクトショップ未来日本酒店で取り扱っているお酒の作り手の方々へのインタビューを通して、お酒の味だけでなくその背後にあるストーリーと想いも皆さまにお届けいたします。
第2回の今回は広島県 藤井酒造の藤井様にお話しをお伺いしました。学生時代の海外経験から、藤井酒造の日本酒のこだわりについてまでお話ししていただきました。今回より全4回に分けてお届けします。

原点はロサンゼルス
海外で感じた日本文化への気付き


-本日は宜しくお願い致します。


宜しくお願いします。


-まずはじめに、酒造りを代々家業としてやっているって大前提はあると思うんですが、藤井さん個人が酒造りをやろうと思ったきっかけとかタイミングを教えて頂けますか?


正直な話、高校生くらいの時は継ぐ気全くなかったですね。日本酒業界自体先行きが明るい業界ではなかったですし、日本酒のイメージって当時若くなくて、あまり魅力とか将来性が感じられなかったというか。
で、日本酒をやりたいなって思ったきっかけって言うよりは、まあありきたりなんですけど、大学で海外に行ったときに、一日本人として、日本のことを全く知らないなってことを海外の人と触れ合うことで感じたことがあったんですよ。


-高校までは広島ですよね。
それからすぐ海外行かれたのですか?


はい。大学はロサンゼルスの大学行って。


-じゃあある種伏線はその時期から、あるわけですね。学生時代に出会われていた。


はい。やっぱり海外の人ってすごい自分の国のこと知ってるんですよ。で、海外の人にお前の国はどうなんだって言われたときに全然わかんないんですよ。逆に海外の事の方が知ってる、みたいな。
ほんとになんか恥ずかしいじゃないけど、なんかこう文化レベルが自分、低いな、みたいなことをすごい感じて。そういうことを考えているうちに、うちの業界って海外の人たちが大事にしている伝統文化、伝統産業をやっている場所じゃないですか。で、そういうふうに考えていくと、これまで続いてきたものを自分の代で終わらせるのって良いの?って考えに繋がって行って、日本酒やってみるか!みたいな。


-なるほど。卒業して、ご実家に戻ったのは何歳頃ですか?


30歳のときです。私26歳まで学生やってたんですよ(笑)。
そのあと4年間IT企業で働いて。


-その時の4年間は、今の酒造りにいかされているなって瞬間はありますか?


まだ活かせてるかわからないけど、すごい大きなところから言うと、会社の運営方法ですかね。古いからこそ良い所とか古いからこそ変なしきたりだとか、そういう所があって。前職はベンチャー企業で新しいことをどんどん取り入れてやってきた会社だったので今思い返すとすごいと感じる。ただ取り入れるからにはそれだけの土壌を作らなくてはいけない。
なので土壌作りとか企業風土の作りだとか。そういうところとかを手本にしたい。


-当時は社員と社長みたいな感じだったのが、自分がそれに近づいていくほど、社長だったらこれつらいなとかしんどいなとか、そういうの分かってくるところありますもんね。


そうですね。なんだかんだ、当時「これは無いんじゃないか」って思ってたことも、今思うとあれ凄かったんだなって思うことが多い。


-30歳くらいで蔵に戻る時のきっかけは何ですか?


自分の中でもそれくらいって決めてましたし、当時は会社の転換期だったんですよ。
その転換期がなければ僕の帰る場所はなかったです。そのおかげで帰れたし、今の藤井酒造がある。


-海外に行って日本の伝統の価値に気付かれたことや、今仰った転換期、そういうめぐり合わせがなければ全然違う仕事をしていた可能性もあるってことですね。


そうですね。なので巡り巡って、30歳で戻って、今やっと2年目です。 なので阿部さん(注:第一回インタビューで登場した阿部酒造6代目蔵元)とドンピシャなんですよ。滝野川の研修などもいっしょで。


-造りにおいて滝野川での勉強はどういう風に生きていますか?


龍勢の酒造りの体系に影響を与えたという部分はそんなに多くないですけど、滝野川は本当に基本的すぎて誰も教えてくれないようなことも教えてくれて、良かったと思います。


-滝野川時代の造り手と継続的にコミュニケ―ションをとっていたりしますか?


たまにありますよ。そういう横のつながりは相当よかったですね。
色んな地域のいろんな蔵が集まって、16人で。


-少数精鋭ですね。いまは滝野川は無くなったんでしたっけ?


初級も中上級も広島に統合されました。
研修生からすれば楽しみの半分くらい奪われました(笑)。

蔵元を「経営」するということ


-お父さんの代と自分の代で、酒そのものの部分と運営の部分それぞれで自分はこういう特徴を出していきたいみたいな方向性や方針などは、ありますか?


造りの部分では、僕は今のままでいいと思う。何も変わらなくていいってわけではなく、造りの方向性とかうちの強みといったところは、僕が変えてはいけないというか変える意味が分からない。
というのも、よく、同世代の蔵元とかが流行りの酒を造ったりとかに重きを置いて今までの物をガラッと変えてしまう所ってあるじゃないですか。それは一つの経営判断なので口を出すことではないと思いますが、僕の価値観でいうとそれまでやってたところを捨てて新しいことをやる、それを代替わりのたびにやると、極まったお酒ってできないとおもうんですよ。同じ方向性同じ軸を持って、目指してきたものを先代から受け継いで、それを更に昇華させていくみたいなところ。伝統ですね。味に関しては、そういうところを僕は引き継いでいきたい。
ただ、会社の運営で言われると、全部変えたいですね(笑)。


-なるほど、面白いですね(笑)


うちって一時期、上場企業の傘下に入ったんですよ。その時にいままでとってこなかった基本的な管理方法や、データ収集の体制を初めて整えた。それこそ開業してまだ十数年の会社で当たり前のようにやってることを100年以上全くできてなかったんです。今でも十分ではないんですよ。単純な話をすると、どこの国にどれだけの商品が年間どれくらいのペースで出ているかって言うデータすらおざなりなんです。
ある意味で伝統とか歴史にかまけて進化してこなかった部分を、僕は経営体制に対してすごく感じていて。社員に対する制度とかも年功序列が当たり前で、やろうがやるまいが同じ給料とか。評価方法にしてもそうですけど、何年勤めていて、基本給がいくらだからボーナスはいくらです、みたいな単純計算でしかない。そんなんじゃ日本酒業界で働きたいって人が、最初は増えてもそのあと続くかといったら、僕だったらやりたくない。
そういう意味で会社の経営って部分をシビアに見て行かなきゃいけないし。所謂今の時代にそぐう様な色んな仕組みだとか体制づくりというものをやりつつ、将来、僕がいなくなった後もずっと続けてほしい。
働く人が仕事をずっと続けたいなって思えるような待遇など制度を構築していかなければいけないなって言うのが、今の中でも自分の一番の課題ですね。


-なるほど。
藤井酒造さんは今まで造りと営業系の部分を、ご兄弟とかご家族で分けてらっしゃるじゃないですか。
藤井さんも将来代表にどこかのタイミングでなられる訳で、仮に藤井さんが経営改革を優先されるときに、ご兄弟以外でどういう方を杜氏にされるのかっていう所でイメージはありますか?


最初の造りの味わいの部分にリンクしてくると思うんですけど、自分たちが培ってきた酒質に対して、本気で、同じ酒質なんだけど更に昇華していってくれるような、モチベーションの高い人。家族だからとか一切関係なくて、自分たちの目指していきたい方向性に共感してくれて、そこに対して自ら考え自ら動いてくれる人であれば、極端な話だれでもいいですよ。


-他の蔵で杜氏という仕事をされてきた人なのか、それとも、他の造りを持ち込んでもらう必要がないということからすると、エネルギッシュでやる気があって、杜氏経験はない人とだったらどっちがいいですか?


それなら後者ですね。
現時点では難しいんですけど、理想は新卒採用とかで入ってきた人が、うちの蔵に入って酒づくりを学び、外の世界もしっかり見て、その上でうちのお酒を好きになってくれて、もっといいものにしたいって言うふうに、社会人の始めからはいって、終わりまでやっていきたいと想ってくれるような人材が理想。


-中途で入ってきた人はある意味フリーエージェントみたいな感覚で、裏を返せばドライな可能性もありますもんね。家族じゃない所のある種のデメリットが出ちゃう可能性もあるわけですね。


中途で入ってきた人を否定するわけはないし、もちろん一緒に働く仲間です。ただ酒造りに関してだけは中途で入ってきた人たちが、待遇面だけで入ってきてうちのお酒があまり好きじゃなっていってガラリと酒質を変えちゃうのは、ぜったいに無しにしたい。


-なるほど。ありがとうございます。

 

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