清水屋酒造 渡辺昌宏様 part3

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トピックスでは、お酒のセレクトショップ未来日本酒店で取り扱っているお酒の作り手の方々へのインタビューを通して、お酒の味だけでなくその背後にあるストーリーと想いも皆さまにお届けいたします。
清水屋酒造渡辺様のインタビューも今回が最終回です。清水屋酒造の逸品「榮万寿」について、日本酒の営業について、詳しくお話していただきました。


酸味が生み出すマリアージュ


-続いてお酒について詳しくお伺いして行きたいのですが、まず、ひとつ目に、商品の年齢とか性別のターゲットはどういったものをお持ちでしょうか?


まずターゲットですが、酒造りを始めた当時から考えていたのは、28,9歳くらいで精力的にお仕事をされているような女性の方です。お金に余裕が出てきて、習い事を一つ二つやっているようなイメージです。
男性よりも女性は、財布のひもが硬いように見えて、気に入っていただくと使う時は使うというイメージがあったので、ターゲッティングにした理由のひとつです。
実際にご購入された方を見ると、全体的には年齢は30代から40代くらいの男女、もしかしたら女性の方が多いかもしれないですね。幸いなことに百貨店さんや小売りでは女性が多く、ギフトとしてご購入いただく事が多いみたいですね。ターゲットとしては従来の日本酒を召し上がる方たちの層よりは年齢が低いと感じますし、良い方向に向いていると思います。


-では次に、それぞれの商品別に、造り手として一番合うと思う料理は何でしょうか?


日本酒全般ですが、日本のお料理は出汁と一緒の文化ですので、基本的には出汁のお料理との相性が素晴らしいと思います。あと個人的にすごくマッチングしたのは、トマトのおでん です。弊社のSAKAEMASUは酸味が強いことが特徴のひとつになりますので、トマトの酸味とすごく相性が良いです。口の中で混ざってカクテルになります。


-それは想像すると、とても美味しそうですね。


最初の頃は、SAKAEMASUをお取扱いただいているお店が無かったので、持ち込みをさせていただきました。
弊社の考えるSAKAEMASUの完成形は、ひとつは外食シーンで完成するイメージがあります。飲食店さんの美味しいお料理と心地よいサービス、かつ、お店が独自に醸し出す雰囲気。この3つが揃ってSAKAEMASUは完成すると考えています。
ですから事前に予約させていただいて、オイスターバーやおでんの美味しいお店に持ち込みをさせていただきました。その時に先ほどお話したトマトのおでんに出会いました。これが純米酒とすごく相性が良かったです。
オイスターバーに関しては、純米吟醸があいます。弊社の純米吟醸はお米の旨味をしっかり感じていただける芳醇な味わいに仕上げていますので、クリーミーでコクのある牡蠣との相性が良いです。
あと忘れてはいけないのがチーズです。発酵食品との相性が悪いことはまずないです。例えばカプレーゼ。トマトとチーズのペアは素晴らしいのでマリアージュを楽しんでいただきたいです。


-なるほど、純米吟醸は濃いめのチーズで、爽やかな物やモッツァレラとかフレッシュ系、場合によってはマスカルポーネとかフルーツみたいなものは純米酒がいいという感じでしょうか?


そうですね。皆さんが仰る通り、日本酒は酸がキーになります。味わいの骨格になる部分が酸になりますので、酸との相性が何の料理とマッチングするか食べ合わせを考えています。
イタリアンやフレンチ・中華などと積極的に食べ合わせしております。


日本酒新規層の開拓


-とても具体的にお話しいただきありがとうございます。結構ワインに近いのですね。
先ほどの年齢と性別のお話にしても、習い事をやってるようなという部分から、想定されるユーザーがどう体験するかってところを具体的に考えてらっしゃることが伝わりました。


以前に料理教室の生徒さんにプロモーションをおこなったことがあり、ご興味を持ってくださった方はサイトを辿って、ECサイトからご注文もいただきました。最初の頃だったので、我々としてはSAKAEMASUを知っていただくという目的が大きかったのですが、それからは女性の方からのご注文が多くなりました。


-販路も日本酒っぽくないですね。


よく言われますけど、皆さんこういうことを考えて営業活動をされているものだと思っていました。
伝統産業は良いものだと思いますけど、世襲でやられてこられて競争力が下がり、そういう状況に追い込まれている部分もあるかと思います。規制緩和して新規の酒造免許が出せるようにしたら、やる気のある若手が出てきて、業界の活性と競争力が上がると思っています。


-そうですよね。伝統産業の負の側面です。新規の清酒酒造免許なんて降りないですし。ワインとかクラフトビールなら降りますが。


ある意味ではチャンスとも捉えています。新規参入ができないので、新参者なら既成概念を破り、新しいもの違うものが造れると思っています。


-なるほど


だから一升瓶もやりませんでした。周りからは反対されました。一升瓶がなく、しかもボトルは全てワインボトルにコルク使用で開けづらくしたら、誰も買わないと言われました。でもこのご意見が僕にとってチャンスだと捉えました。ここまでのことは誰もやっていないわけですから。業界の人に成功すると言われたら、むしろこけたかもしれません。


-色々な蔵元さんを見に、酒造組合主催の商談会が年に何回か開催されているじゃないですか。営業としてそういったものには出られないんですか?


全てお断りさせていただいております。この季節だと2、3回は商談会や利き酒会などイベントがありますが、残念ながら参加したことがありません。


-販路は全部、さっき仰っていたように、前職時代からの繋がり含め、自分で積み上げた人脈に対し、直接トップセールスでプレゼンをしていく。その積み重ねなんですね。


何も難しいことではないです。仮に商談会などのイベントに参加すれば生産性はいいかもしれませんが、そこにいらっしゃる多くは玄人の方たちになります。それだと弊社が考える、新規のお客様には出会えません。
業界の商談会には参加しないことが弊社の営業であり、ブランディングになります。仮に参加したとしても、既存の諸先輩らのお客様を取ることになってしまいますし、そういうことはしたくないです。独自に新規のお客様を開拓し、微力ながら業界を盛り上げたいと考えています。
この業界は明らかに顧客の取り合いです。ご贔屓してくださるお客様には色々なにかしていきたい気持ちがありますし、プレイヤーとして営業活動している身からすればフェーストゥフェースのお付き合いを引き続きおこなっていきます。このスタンスは十年二十年先も続いていくと思っています。
雑誌にこそ出ませんけれども、そういったところには直接顔を出させていただいております。驚かれますけど「社長自ら営業しているの?」って言われます。飲食店さんから、他酒蔵の方が来られた話は、ほとんど聞いたことがありません。
日本酒が売れないとは聞きますが、既存の酒蔵のお酒はある程度売れているわけです。営業していなければ売れないのが当たり前なのに、すごいとは思います。


核となるのはコミュニケーション


-最後の質問になります。商売を大きくしていくにあたって、様々な取り組みをされていると思いますが、何をするにせよ一定程度お金が必要な行為でしょう。それはどう手当てをしてらっしゃるのですか?


6年目で実績が出てきたことで、補助金だとか融資に関して、お声をかけて頂けるようになってきました。かつ、うちのお酒を召し上がって頂いた方には若い方が多い一方、現役を退いた方もいらっしゃって、うちのお酒を気に入って頂いた方にはとても助力していただいています。資金以外でも人脈のマッチングなどしていただくこともありました。
こういったことも、この6年目からですね。何も特別なことはしていないですけど、真摯に取り組んでいるうちにお声をかけていただけるようになったということでしょうか。小さな積み重ねです。それしか言えないですね。


-コミュニケーションですね。


はい、コミュニケーションは重要です。どんなに最新鋭の機械があっても、人脈による恩恵なんて得られないわけです
それは僕にとっても会社にとっても財産です。全て感謝しかないですね。いろんな方からご協力いただいて、では僕がどうやって恩返しをするかと言ったら、成功するしかないです。一過性にはしたくないのですが、お声をかけていただくような物を造っていかなければいけない責任があります。
でも何にも難しいことはないです。。ただ誠実に、真摯に全てに向き合い、お客様を決して裏切らないことがとても大切です。きれいごとって言われますけど、きれいごとが大きな差別化になると思っています。あとは多分、皆さまが寛容なんでしょうね。お付き合いして僕のわがままを聞いてくださる方に恵まれたといいますか、それありきで今までずっと成り立ってきたと思っています。


-ありがとうございます。


渡辺様、ありがとうございました。
※本写真は社員蔵人の渋谷一平様です。当蔵は社長の清水様の方針で、社長個人ではなく、社員の方をフィーチャーした広報活動をしていらっしゃいます。